TOPANK免疫療法とは>ANK療法の特徴

1990年代のはじめ、京都大学の研究者二人が、困難と言われ続けたNK細胞の本格培養に成功します。NK細胞の活性化と増殖、両方の意味を込めてAmplified(増強)Natural Killer自己リンパ球免疫療法(通称、ANK免疫細胞療法、もしくはANK療法)と名付けました。

放射線や抗癌剤治療をされた方のNK細胞は、ANK療法の培養技術で以下の写真のように回復していきます。
お預かりしたお一人おひとりの細胞は、電子顕微鏡下で熟練の技術者が日々目視しながら培養を行っています。このようにNK細胞がきれいに能力を回復していきます。これを確認できるのはANK療法の培養技術だけです。

ANK培養前・培養中・培養後
  1. がんの部位を問いません
  2. 標準治療の併用を前提に治療を設計します
  3. 一般法とは桁違いの数のNK細胞を培養します
  4. 圧倒的に高い細胞傷害活性をもっています
  5. 強い免疫刺激作用による副反応を伴います
  6. ANK療法は分子標的薬との併用で治療効率が向上します
  7. QOL改善効果も狙います
  8. 治療前の状態によっては仕事を続けながら治療を受けることも可能です
  9. ATLを含む白血病、B型/C型肝炎などのウイルス感染者も治療実績があります

ANK 療法は治療するがんの部位を問いません。なぜならNK細胞が元々、全身をパトロールする存在だからです。静脈に点滴で戻せば血流に乗って全身を巡り、腫瘍付近を通る際に血管壁の隙間から外へ抜け出し、腫瘍へ殺到します。現在、知られている限り、如何なるがん細胞でも攻撃し、かつ正常細胞を傷つけない存在は体内でNK細胞しかありません。但し、NK細胞は活性が低いとがんを攻撃しません。

なお、脳内にある脳腫瘍の原発巣や脳転移の治療については事前の措置が必要です。脳には脳血液関門(Blood Brain Barrier)と呼ばれるゲートが存在すると考えられおり、多くの薬剤や他の免疫細胞もそうなのですが、NK細胞はこのゲートを通過しにくいようです。脳の外科手術、放射線、あるいは放射線療法の一種ですが、サイバーナイフやガンマナイフという治療を受けられた後、概ね半年程度の期間、ゲートが開くようでANK療法によって脳内の腫瘍組織が消滅した方がいらっしゃいます。

ANK療法を実施する医師は標準治療の併用を前提に治療の設計を考えます。細胞の培養は1クール分(もしくは2分の1クール分)を一気に行い、培養した細胞を凍結保管します。そして、治療スケジュールに応じていつでも融解し再培養によって活性を回復させた上で、治療を行うことができます。(凍結した細胞は活性が下がるため再培養が必要です。) そのため、標準治療実施前に培養を完了しておき、標準治療中は凍結保管します。そして、標準治療終了後に点滴を開始することも可能です。また、抗がん剤の休薬期間中を利用してリンパ球の採取を行うことや、培養細胞の一部を点滴し抗がん剤の副作用を和らげることを狙うことも可能です。
抗がん剤の投与スケジュールが変更になる、もしくは点滴予定日に体調によって点滴ができないような場合、無菌状態が維持されていれば点滴用の細胞を培養センターに戻し、再培養することも可能です。このように、自在にスケジュールを組めますので標準治療の進行に合わせてANK療法を進めることが可能です。

ANK療法はがん細胞を傷害する能力が高いNK細胞を5~8リットルという大量の血液から分離採取し、活性を高め数も増やして治療に用いるものです。最大の特徴はがん細胞を攻撃する治療強度の強さにあります。※詳細は「免疫細胞療法の違い」をご覧ください

ANK療法では採取されるNK細胞は最大でも数億個以下になりますが、これを3週間培養しNK細胞数100億個を目標に増殖させます。(1クール12回分の場合。採取された細胞の数や状態によって、これより少ないこともあります)

  • 1. ANK療法
  • 2. 一般法 (ブランド名は様々でも、培養された細胞はほぼ同じものと考えられます)
  • 3. 樹状細胞療法

採血量の違いと免疫反応

  1.ANK療法 2.一般法 3.樹状細胞療法
採血量 5,000~8,000mlからリンパ球を分離採取 20~50mlの血液を採取 数千mlからリンパ球を分離採取※
NK細胞数 1クールとして、100億個前後が目標 1回の点滴に数百万個 対象外
免 疫 反 応 40度前後の発熱など、明確な免疫反応 特になし。あっても微熱程度 特になし。あっても微熱程度

※樹状細胞は感染症が発生しやすい部位に張り付いており血液の中にはほとんどいません。樹状細胞療法を実施する際にはANK療法と同様の装置を用い、数リットルの血液から単球を分離し、薬剤刺激で樹状細胞に変化させてから体内に戻します。体内で自然に成熟した樹状細胞と人工的に体外で加工された樹状細胞が同じものかはわかりません。

ANK療法は当初、単独でも進行がんを征圧できることを目標に開発されました。一般診療前に実施された小規模な臨床試験では、標準治療を受けていない進行がん患者様を対象に、ANK療法のみを半年間、間を空けずに連続治療することで完全寛解後5年以上、再発の兆候がないことを確認しました。
現実の一般診療では標準治療によってNK細胞がダメージを受けた方が多く受診されます。加えて治療費の問題もあり半年間連続治療は難しく、実際には他の治療を併用しながら、ANK療法はなるべく少ない治療回数に抑える工夫がなされています。従い、臨床試験と同じ条件で治療が行われることはほとんどありません。
(臨床試験は条件に合う患者様を選んで特定の治療パターンで実施されます。そのため、様々な状態や治療設計で実施される一般診療に、臨床試験の結果をそのままあてはめることは適切ではありません。)

下のグラフは細胞傷害活性を示しています。ANK療法で培養されたもの、米国LAK療法と同様の培養条件(高濃度インターロイキン2刺激、培養期間3日以内)で培養されたもの、国内一般に広く実施されている一般法の条件(低濃度インターロイキン2 刺激、培養期間2週間)で培養されたものを社内で比較したものです。縦軸は制限時間内に傷害された標的がん細胞の割合を示しています。(試験管の中で免疫細胞と標的がん細胞を戦わせたものです)

活性についての内部実験データ

※一般法:国内の免疫細胞療法はブランド名が異なるだけで、内容はどれもほぼ同じものです。

このように、ANK療法は、がん細胞に対して圧倒的に高い細胞傷害活性を示しています。

ANK療法では点滴ごとに、発熱などの顕著な免疫副反応があります。
これは体内に戻された活性の高いNK細胞が大量の免疫刺激物質(インターフェロンをはじめとするサイトカインと呼ばれる免疫細胞間同士の信号物質)を放出する結果として現れるもので、それだけ免疫刺激作用が強いことを意味します。(ANK療法以外の免疫細胞療法では若干の微熱などを除き、免疫副反応がみられるものは見当たりません。)

刺激を受けた体内のNK細胞が活性化すると、大軍団としてがんを傷害することが期待できます。

化学療法を限界まで受けられ極端に免疫力が低下している患者様の場合、初回の点滴や2回目の点滴の際、高熱を発することがあります。3回目以降は落ち着いてきます。ANK療法医の判断で、点滴で戻す細胞数を減らす場合もあります。

分子標的薬はがん細胞を直接攻撃しません。また、免疫細胞にダメージを与えない設計になっています。もっとも重要なものはがん細胞への増殖信号をブロックすることにより、がん細胞の増殖にブレーキをかけることです。
分子標的薬の中でも、抗体医薬品と呼ばれるものの多くは、増殖抑制作用に加えて体内のNK細胞の活性を2倍程度以上高めるADCC活性(抗体依存性細胞傷害活性)とよばれる機能を持ちます。これは、体内のNK細胞が、がん細胞を攻撃する効率を高める作用のことです。これをANK療法と併用することで、がん細胞の傷害スピードが増し、治療効率が向上します。(詳しくは「分子標的薬とADCC活性」をご覧ください。)
ANK療法の実施にあたっては副作用、薬剤費、期待できる相乗効果などを慎重に検討した上でANK療法の治療効率を高めると考えられる分子標的薬の投与も行うことがあります。

QOL改善については、患者様お一人お一人、全く状況が異なります。概ねANK療法を受けられると、食欲がでてきた、眠れるようになった、やる気がでてきた、肌の艶がよくなった、風邪をひかなくなった、など、何らかの臨床諸症状の改善を感じる患者様がいらっしゃいます。一方、悪寒や発熱はとても辛い、という方もいらっしゃいます。
ANK療法実施医師の多くが受けている印象として、抗がん剤の休薬期間にANK療法を少量投与することで、抗がん剤の副作用が緩和される傾向、というものがあります。抗がん剤の副作用によって、抗がん剤投与が中止になるという状況が回避され、結果として、長期にわたり抗がん剤投与が継続できるケースもあります。

短期間に、全ての培養細胞を投与すると大きな腫瘍が一気に壊死を起こす危険性がありますので、培養細胞を12分割し原則、週2回ずつ投与することで安全性を確保しクリニックへの通院で治療を受けられるようにしました。
ANK療法を受けられる時点でお仕事ができる状態の方であれば週二回、発熱のため休みをとるという前提で、お仕事を続けられることも可能です。(詳しくは「よくある質問 ANK治療後の、発熱が心配です。」をご覧ください。)

「免疫治療は強くなければ効果が得られない、ところが強すぎる治療は危険を伴う」効果と安全性のジレンマを乗り越えるため、ANK療法は一度に投与すると危険なレベルの治療強度を1クールとして確保しておき、分割投与によって効果と安全性のバランスを取りました。

急性化したATLや、白血病化した多発性骨髄腫などはがん細胞の増殖が異常に早く、加えてリンパ球の分画の中にがん細胞が大量に混じってきます(固形がんの患者さんの血液を採取しても、ほとんどがん細胞は含まれていません)。そのため、一般の免疫細胞療法では白血病は「治療不可」となります。特別に、がん細胞を洗浄などによって除去しない限り、培養器の中でがん細胞が大量増殖するからです。

ANK療法でも白血病の治療は容易ではありませんが、混入がん細胞との戦力バランスによっては培養中に混入がん細胞を死滅させることも期待できますので、著効例も含め治療実績があります。
培養中にがん細胞を実際に傷害することができるのは、ANK療法がもつ重要な特徴です。なお、症状によっては治療をお断りする場合や試験培養を行い、培養可能なことを確認する場合などもあります。
詳しくは、医師とご相談ください。

ANK療法の場合は血液中に存在する、ある種のウイルスやマイコプラズマなどは、培養中に消滅することを確認しています。ただし、全ての既知のウイルスを検証した訳ではありません。B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルス、HTLV-1型ウイルスのキャリアの患者さんについて実際に培養実績があります。

ANK 療法は、元々患者さんご本人の体内にある ナチュラルキラー(NK) 細胞を用いるものです。
遺伝子操作など、予想不可能な変化をもたらす可能性のある細胞加工は一切おこなっておりません。人工的なNK細胞を作り出しているのではなく、NK細胞本来の機能を回復・解放していますので原理的に安全と考えられています。