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がん免疫細胞療法は米国政府研究機関NIHが開発したLAK療法が原点です。これは、がん治療の本命NK細胞を患者体外に取り出し、高濃度インターロイキン2による刺激を加え高度に活性化するものです。しかし、NK細胞は増殖すると活性が下がるため大量のNK細胞を採取する、具体的には3日間かけてNK細胞を含むリンパ球集団を血液から取り出すことで細胞数を確保しました。そして、NK細胞が本格的に増殖を始める前に体内に戻しました。
米国法が抱えたNK細胞培養のジレンマ
■増殖させると活性が下がる
■活性を上げないと役に立たない

ANK療法は、この壁を正面から乗り越え世界中の研究者が挑戦してなし得なかった「活性と増殖を同時に成立させる※」培養技術が用いられています。
※NK細胞以外の細胞を除去するのではなく、常にNK細胞に最適化された微妙な培養環境の調整により高度に活性化されたNK細胞を選択的に増殖させます。

研究レベルでは様々な手法が存在しますが、実際にがん治療として国内で実施されている免疫細胞療法は、ほとんどが以下の3つのうちのどれかです。

  • 1. ANK療法
  • 2. 一般法 (ブランド名は様々でも、培養された細胞はほぼ同じものと考えられます)
  • 3. 樹状細胞療法

採血量の違いと免疫反応

  1.ANK療法 2.一般法 3.樹状細胞療法
採血量 5,000~8,000mlからリンパ球を分離採取 20~50mlの血液を採取 数千mlからリンパ球を分離採取※
NK細胞数 1クールとして、100億個前後が目標 1回の点滴に数百万個 対象外
免 疫 反 応 40度前後の発熱など、明確な免疫反応 特になし。あっても微熱程度 特になし。あっても微熱程度

※樹状細胞は感染症が発生しやすい部位に張り付いており血液の中にはほとんどいません。樹状細胞療法を実施する際にはANK療法と同様の装置を用い、数リットルの血液から単球を分離し、薬剤刺激で樹状細胞に変化させてから体内に戻します。体内で自然に成熟した樹状細胞と人工的に体外で加工された樹状細胞が同じものかはわかりません。

一般法の場合は注射器などで20~50ml程度の採血、2週間ほど血液バッグ中に静置して培養。決まった日に来院された患者さんに点滴で戻し、若干の微熱を除いて特に免疫反応がない、というものです。一般法ではT細胞が爆発的に増殖し1回の点滴あたり数十億から100億個レベルのT細胞を含みます。薬剤投与や抗体を用いた前処理など若干のバリエーションがありますが、大量のT細胞とわずかのNK細胞という基本は同じです。ブランド名としてはNK細胞療法やT細胞系の名称、あるいは混合等、名称だけではどの細胞を用いているのかわからないものなど様々です。

これは、フローサイトメトリーを用いて、リンパ球中の細胞を計数した結果です。

ANK療法によるNK細胞増殖 フローサイトメトリー

点一つが細胞一つを表す
T細胞:CD3(抗原)を持ち、縦軸上部に行くほどT細胞の性質を強く出現
NK細胞:CD56(抗原)を持ち、横軸右側に行くほどNK細胞の性質を強く出現

Day 0(培養開始前)

左上枠はT細胞集団です。右下枠にはNK細胞集団も存在しています。

Day 21(培養21日)

ANK法で培養すると、右下枠のNK細胞集団が大幅に増大しているのがわかります。また、NK細胞集団はCD56を強く出現させていることも読み取れます。
同時に、T細胞集団は大幅に減少しています。
NK細胞にとって居心地のいい環境で培養を続けることにより自然とNK細胞が選択的に増殖されるのです。

一方、ANK法以外の一般法では左上枠のT細胞集団が爆発的に増大しています。NK細胞はごく少量しか存在していません。更に、CD56の出現が激減していることが読み取れます。

がん治療においては、がん細胞を傷害する能力が圧倒的に高いNK細胞を用いるのが基本です。他の免疫細胞の大半はがん細胞を傷害できません。若干、がん細胞を傷害するものもいますが傷害能力が弱くNK細胞の比ではありません。
次に、活性の高いNK細胞の数を揃えなければ焼石に水となります。活性の高いNK細胞は免疫抑制が強い患者さんの体内に入るとインターフェロンをはじめとする大量の免疫刺激物質群を放出します。これらは、ほとんどが発熱作用をもつため免疫刺激がかかると発熱は必発です。ただし、活性が高くても投入する細胞数が少ないと発熱などの免疫反応は見られません。
活性の高いNK細胞を大量に投与して、初めて治療として成立します。
ANK療法が選ばれる理由がここにあります。