ANK療法1クールは、米国LAK療法よりもNK細胞の活性・細胞数ともに上回るため、一度に点滴で体内に戻すと大きな腫瘍が一気に壊死を起こす可能性があり、これは危険です。そこで、週2回ずつ12回に分散投与することで、一回の点滴ごとの安全性を確保しているのです。
そのため、一回の点滴におけるNK細胞の総数に上限を設けています。
それでも、40度近い発熱を伴うことがあります。一度に体内に戻す細胞数を増やす方が、治療強度は強くなるのですが、大きな腫瘍が壊死を起こしてしまうと、大量死したがん細胞から溶け出すカリウムなどにより、心停止リスクなどがあります。
免疫細胞療法であっても、抗がん剤であっても、一回の治療強度は制限する必要があるのです。現行のANK療法の1回の点滴よりも強い免疫治療を行うのであれば、ICU集中治療室に入って、心停止などを防ぐ体液コントロールを行う必要があり、現実的ではありません。(これまでの治療実績の中で、サイトカインストーム等の事故は発生していません)
ANK療法により培養されたNK細胞は、健常人のNK細胞の平均的な活性より遥かに活性が高くなります。(※1)一度に、点滴で体内に戻されるNK細胞は、体内にいるNK細胞(※2)に比べれば、ごくわずかです。それでも非常に強力な培養NK細胞が混じることで、抹消血液中の全NK細胞の平均の活性として、効率よくがん細胞を攻撃するレベルまで上昇します。
ところが、患者さんの免疫抑制は非常に強いため、点滴後数日以内に、NK活性は急激に下がります。(それでも、治療前よりは高く維持されます。)そこで、週二回、点滴を行うことにより、つまりNK活性が下がってしまう前に次の点滴を行うことにより、体内のNK活性の平均値として、十分がん細胞を攻撃できるレベルを維持します。
なお、免疫抑制信号をブロックする免疫チェックポイント阻害薬を併用すれば、NK活性の低下は起きませんか? というお問い合わせがあります。免疫チェックポイント阻害薬は、主にT細胞に働きかけるものであって、NK細胞はそれほど影響を受けません。
週2回ずつ6週間連続、合計12回の点滴をもって1クールとしています。自由診療なため、治療費は各医療機関にて設定されています。治療費に関しては各医療機関のサイトをご確認ください。どの位治療回数が必要かは、患者さん、お一人ひとり、状況が異なりますので、医師とご相談ください。
手術後の再発防止ならば、2分の1クールのみを行う場合もありますし、末期進行がんで、標準治療を限界まで受けられ、免疫システムが相当の打撃を被っている方の場合、1クール目は免疫系を最低限回復させ、がんを本格的に攻撃するのは2クール目から、ということもあります。
免疫抑制を打破し、また抑制状態に戻りかけ、また打破し、というサイクルを繰り返すうち、NK活性が一定以上の状態を保つようになります。画像に腫瘍が映らなくなり、かつ強い免疫抑制を打破し、免疫監視機構を再建すれば、治療を終え経過観察となります。
なお、NK活性の正確な測定は大変難しいもので、各地の大学で行われている方法(Crリリース法など)は、簡易式に過ぎません。東洞院クリニックでは、研究レベルで正確なNK活性を測定することが可能ですが、大量の検査を実行することができません。通常の治療効果のモニタリングには標準治療と同様に、画像診断、腫瘍マーカー、臨床所見などを複合的に用います。
- (※1)健常人のNK活性は、激しい個人差があり、標準値を定める定説はありません。
あくまで、参考として、ある種の平均値を取ったものです。 - (※2)健常人の場合で、数百億個とか、1000億個レベルと考えられていますが、正確に測定することはできません。