強い免疫抑制下にある患者さんの体内には、いくら沢山、免疫細胞がいても、目の前のがん細胞を攻撃しないのです。必要なのは、がん細胞の情報ではありません。そんなものは、免疫細胞の目の前にゴロゴロ転がっているのです。
問題は、「眠らされている状態」です。がん細胞は、目の上のコブである免疫細胞を眠らせるのです。そこで、がん細胞の眠り薬がとどかない患者さんの体外に免疫細胞を取り出し、十分、目を覚まさせてから、体内に戻す。これが米国政府研究機関NIH(国立衛生研究所)が確立した免疫細胞療法の原点です。
免疫細胞の本格的な活性化は、免疫抑制の及ばない体の外で行うのが理に適っています。
補足)
なお、がんワクチンに若干の延命効果があったという報告も稀にあります。
(ほとんどが、何の効果もなし、という報告です。)
ところが、厳密な効果の証明にはなっていないと考えられています。
がんワクチンには、アジュバンドと呼ばれる免疫刺激物等の複合物を混ぜて使用します。
併用したアジュバンドには、若干の免疫刺激効果があるため、ワクチンの効果といっても、アジュバンド単独の効果ではないのか、と考えられます。
実際に、アジュバンドを含むがんワクチンを投与したグループが、アジュバンドのみを投与したグループより延命したとする報告は見当たりません。
また、前立腺がんのように、抗がん剤が奏効しにくいがん患者さんを2つのグループに分け、一方には抗がん剤、他方には、がんワクチンを投与することで、がんワクチン投与群の方が、死亡に至るまでの日数が永かった(延命効果)とするものもありますが、当然、抗がん剤が奏効しにくいタイプのがん患者さんに、抗がん剤を投与すれば、抗がん剤の副作用により余命が縮んでいる可能性があり、がんワクチンによる実質的な効果の証明にはなりません。